瞑想の始め方

瞑想への第一歩

多くの流派の練習に共通することですが、瞑想の第一歩は、基本的に呼吸を意識することです。

ここでは、誰でもいつでもどこでも始められ、実践できる瞑想法の第一段階を紹介したいと思います。この瞑想法はめったに本には載っていませんし、本に載っていても正しく理解されることは少ないです。とはいえ、とてもシンプルなので、3歳の子どもでもできることがわかっています。


練習方法のステップ

練習を始めるための体系的な段階的方法を説明します。年齢を問わず誰でも始めることができます。一方、始めるのに遅すぎるということはありません。たとえ末期的な病気の最中であっても、始めることは有益であり、寿命も延びるかもしれませんし、少なくとも安らぎを与えてくれるでしょう。練習は少なくとも1日1回、時間の許す限り行われるべきです。

成功の鍵は座る時間の長さにではなく、意識の強化にありますが、それは徐々にやってきます。一日のうち他の時間帯に実践することもできます。疲れていてエネルギーをすばやく回復させたいとき、怒ったりイライラしたりしていてやさしくしたいとき、忙しくて緊張していて、リラックスして効果的に行動したいときなどです。空港や駅で待っているとき、あるいは誰かが運転している車の中でもできます。この練習には何の制限も限界もありません。この練習によって害が生じることはありません。

ヒマラヤのヨギーたちによって教えられたラージャ・ヨーガの瞑想の体系では、次のような瞑想のステップがあります。これらは基礎となるものです。読者のエゴはこう言いたいかもしれません。 「私は10年、20年と瞑想を実践してきた。このやり方は正しくない。」と。多くの瞑想の探求者は、心を無にしたり、スポーツ選手のように呼吸を止めたりする練習をしていますが、正しい呼吸法を学んでいません。私たちの理論体系においては、すべての人に対して以下の点を確認し、基礎がきちんと築かれていることを確認してから、その先に進みます。

その方法の手順は以下の通りです。

1. 横隔膜呼吸と等間隔呼吸

2. 背筋を伸ばし、足、背中、首に違和感のない正しい姿勢。不快感を感じることなく、背骨を正しくまっすぐに保つことができること。

3. シティリ カラナ(系統的弛緩)。瞑想の間中、神経・筋肉系のリラックス状態を維持すること。

4. 呼吸への意識。呼吸にはいくつかより細かい方法があり、徐々に学んでいきます。

5. マントラ、またはいずれかの精神的伝統の神聖な言葉を使うこと。(a)最初は、呼吸とともに流れやすい音、例えばソーハム(Soham)という言葉を使います。 (b)このようなステップをマスターした後、マントラ ディクシャ(マントラのイニシエーション)が行われ、より洗練されたジャパ(マントラを心の中で唱えること)の、より高度な方法を段階的に教えられます。

これらの手順について詳しく説明していきましょう。


横隔膜呼吸

横隔膜は肋骨のすぐ下にある筋肉で、胸腔と腹腔を隔てています。理想的には、横隔膜が収縮することで、肺の下の方まで完全に息を吸い込むことができます。横隔膜が弛緩すると、肺の下部を押して、肺のこの部分から完全に息が吐き出されるようになります。生まれてすぐの子どもは横隔膜呼吸をしますが、後にこの自然な呼吸を忘れてしまいます。正しい呼吸ができるように訓練し直さなくてはなりません。

深く正しい呼吸では、肺に力が入らず、緊張が生じることはありません。呼吸は、活性化された感覚が生じるように、リラックスしていなければなりません。

横隔膜呼吸は、(a) マカラーサナ(ワニの姿勢)、うつぶせの姿勢で学び、(b) シャヴァーサナ(屍の姿勢)、さらに座位と立位で練習します。

この練習を行うには、うつぶせになります。かかとを少し離し、母趾(ぼし)の先を少し触れさます。右腕を左腕と交差させ、胸の上部が床から少し浮くようにします。手首の関節に近い前腕に額を乗せます。首はまっすぐに保ち、肩の力を抜きます。

呼吸に意識を向けます。この姿勢では胸式呼吸をすることはできません。呼吸の流れを観察します。呼吸の滑らかな流れとともに、お腹とおへそのあたりがゆっくりと上下するのを観察します。

呼吸が乱れたり、途切れたりしないように。なめらかな川の流れのように呼吸をします。ゆっくりした流れにします。お腹とおへそのあたりの上げ下げとともに、穏やかな流れを観察します。呼吸の流れを注意深く見てください。

常にこの方法で呼吸することを心がけましょう。

この練習を5~15分行ったら、シャヴァーサナの姿勢で仰向けになります。呼吸を続け、横隔膜が緩んだり縮んだりする過程(お腹とおへその部分の上下)を観察します。

左の手のひらを胸に、右の手のひらをお腹に当てます。左の手のひらの下では何の動きも感じられないはずです。右の手のひらは、滑らかな上昇と下降を、滑らかに感じるはずです。

吸う息と吐く息の長さが同じになるように、等間隔の呼吸を身につけます。この練習を習得したら、2:1呼吸(吐く息が吸う息の2倍の長さ)に移りますが、すぐにではありません。

常に横隔膜だけで呼吸するようになると、この練習を習得したとみなされます。


正しい姿勢

瞑想で座るとき、そして理想的にはそれ以外のときにも、背骨がまっすぐであることが最も重要です。

残念ながら、すべての椅子やソファ、現代のベッド、車や飛行機の座席は、背骨が曲がった姿勢で座らせることで、人々に間違った呼吸を強いるようにつくられています。

祈りやカタ、サットサンガなどで、背骨が弓のように曲がって悲しげに座っている人をよく見かけます。これは、(a) 正しく完全な呼吸を妨げ、短い呼吸を引き起こし、寿命を縮めます。(b) 喘息や心臓病など多くの病気を引き起こしたり、悪化させたりします。(c)背骨を中心とする神経系全体にも悪影響を及ぼします。

まっすぐな背骨は直線ではありません。

• わずかにS字を描いています。

• 背中の下部3分の1(腰椎1~5番)がくぼみ、背中の中央部3分の1(胸椎2~12番)が盛り上がります。

• 背中の上部がくぼみます(頸椎5番から胸椎1番)。

• 頸部(頸椎1~4番)はまっすぐです。

それらは専門家の指導の下で学ぶべきです。しかし、いくつかの心得は役に立つでしょう。シッダーサナやパドマーサナのような難しいポーズをとろうとする必要はありません。椅子に座るか、楽なあぐらの姿勢でも構いません。

残念なことに、あぐらをかくと重心の関係で背中が曲がってしまいます。それに対する答えは簡単です。

ブランケットを折りたたんで、きちんとした固めのクッションにします。これは、座るための敷物のようなものではありません。座骨の下だけに敷き、脚や膝は床につけます。こうすることで、腰を地面から浮かせることができます。体を真っ直ぐにします。背中や首に違和感がある場合は、腰の下の敷物の高さを変えたり、ブランケットの折り数を減らしたり増やしたりする必要があります。最適な心地よさが得られるまで、数日間試してみましょう。この姿勢で常に座ることを心に決めてください。

床に座るのが難しい場合は、硬い椅子のふちに座り、足を地面につけるミトラーサナの姿勢でも構いません。ただし、背筋を伸ばして座ってください。この習慣を身につけましょう。それをあなたの自然な姿勢にしてください。そうすれば、自分の中で心理的な変化が起こることに気づくでしょう。例えば、意識、集中力、余計な自尊心や 無駄なプライドのない自信、人生における能率などが高まるでしょう。

正しい姿勢で座ったら、横隔膜呼吸を続け、胸の圧迫感を感じないように、呼吸の流れや、お腹とおへそ周りの緩やかな上下を心の中で観察します。緊張している場合、その呼吸は正しくありません。


体系的なリラクゼーション

横隔膜呼吸に続くシティリ カラナは、シャヴァーサナの第二段階です。シャヴァーサナには、段階的に複合的な精神的練習があり、それらは最終的にヨガニードラへとつながり、微細体への入り口となります。

基本的なリラクゼーションの手順を学びましょう。シャヴァーサナで仰向けになり、両足を広げ、両腕は体から離し、体の横に添え、手のひらを上向きにします。横隔膜の呼吸を続けます。そして、次の順序で自分の身体の各部分を思い浮かべながら、リラックスするように心の中で呼びかけます。

額、眉、目、鼻孔、頬、顎(あご)と口角、顎先、首、首の関節、肩、肩の関節、上腕、ひじ、下腕、手首、手、指、指先。指先、手、手首、下腕、肘、上腕、肩関節、肩、胸、胸のあたり、お腹、おへそ、下腹部、骨盤、太ももの関節、太もも、膝、ふくらはぎの筋肉、足首、足、つま先。

今度は逆の順序で身体の上へ。

つま先、足、足首、ふくらはぎ、膝、太もも、太ももの関節、骨盤、腹部、おへそ、お腹、胸のあたり、胸、肩、肩関節、上腕、肘、下腕、手首、手、指、指先。指先、指、手、手首、下腕、肘、上腕、肩関節、肩、首関節、首、顎先、顎、口角、頬、鼻孔、目、眉毛、額。

この順番を覚えておいてください。この順番で身体の各部位をほぐしていきましょう。各部位をリラックスさせましょう。例えば、手は赤ん坊の手のようにします。最初うまくリラックスできなかったり、緊張しすぎて筋肉がほぐれるということを忘れてしまっている場合は、緊張と弛緩という別の弛緩法を使ってもよいでしょう。この弛緩法もシャヴァーサナでも行います。

この弛緩法を行うための流れは以下の通りです。緊張させるときは、指やつま先から上に向かって緊張させます。その際、交感神経に働きかけている筋肉以外の筋肉を緊張させないようにします。それぞれの筋肉ごとに2回の呼吸をはさみ、リラックスします。一連の流れをすべて終えたら、リラックスした状態で10呼吸休みます。

• 右脚→左脚→右脚→左脚の順に緊張と弛緩をします。

• 両足を同時に緊張させ、弛緩します。これを繰り返します。

• 右脚と右腕→左脚と左腕→右脚と右腕→左脚と左腕の順に緊張と弛緩をします。

• 右腕→左腕→右腕→左腕の順に緊張と弛緩を行い、次に両腕を同時に緊張と弛緩をします。これを繰り返します。

• すべての手足を同時に緊張と弛緩をします。これを繰り返します。

身体の連続的弛緩法、または緊張と弛緩の弛緩法のいずれかを終えたら、前述のように観察しながら横隔膜呼吸を続けます。こうして数分間横になった後、瞑想のために座ります。(a)折りたたんだブランケットの上に座骨を置き、(b)背筋を伸ばして座ることを忘れないでください。

もう一度、姿勢を整える過程で、緊張していないか、身体を素早く点検します。リラックスします。横隔膜呼吸を取り戻します。


呼吸への意識

呼吸の流れに身をまかせ、滑らかに、一定に、乱れることなく、呼吸の途中で途切れることなく、呼吸と呼吸の間で止まることなく、音を立てることなく、いきみなく、呼吸をします。タイラ ダァラヴァート、油を注ぐ滑らかな流れのように。その流れを意識します。その意識を切らさないように。

鼻孔に呼吸の流れと感触を感じます。それを途切れることなく続けます。吸うことの意識は、すぐに吐くことの意識に溶け込むはずであり、その逆も同様です。吐く息への意識は特に重要です。

これまでの人生で身についたいつもの癖で、マインドがさまよってしまったら、再び背筋を伸ばし、素早くリラックスし、横隔膜呼吸を再び確立します。鼻孔の中の呼吸の流れや感触を意識し続けます。


マントラまたは聖なる言葉

最初はソーハムを使います。ハムソーと言って、ハムサ・マントラと呼ぶ人もいます。息を吐きながら、ハムという言葉を心の中で思い起こします。息を吸いながら、ソーという言葉を心の中で思い起こします。異なる宗教的伝統の人は、その伝統で定められた言葉を使ってもよいですが、その伝統に従った瞑想を知っている人からきちんと学ぶべきです。ヒマラヤの伝統にある者は、それぞれの宗教的(あるいは無神論的)背景に従って教えるよう訓練されています。

呼吸の意識も、思考としての言葉の流れの意識も、途切れることがないようにしましょう。呼吸、言葉、マインドがひとつの流れとして一緒に流れている様子を観察します。

少しずつ時間を長くしていきます。どれだけ長く座っているかではなく、その流れの意識を途切れさせることなく、何秒間維持できるかです。力を入れすぎると逆に自分を疲れさせてしまいます。人は努力して眠りにつくことはできませんし、自分と戦って瞑想状態に入ることもできません。流れに身を任せるのです。瞑想をしてはいけません。ただ観察し、経験するのです。


〜 Swami Veda Bharati, "Beginning Meditation"より

AHYMSIN Japan

AHYMSIN (Association of Yoga Meditation Societies International) Japan

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